2010年12月18日

【にゃぽ再録】ボカロ家族ネタ3 

にゃっぽんで捧げ物にしたSSをサルベージなう。
珍しくカップリングありで、カイミクです。
以前書いたボカロ家族ネタと微妙に話がリンクしているような。
でもこれ単品でも大丈夫だと思われます。
カイトは誰とくっついても天然ですごいノロケを言いそうなイメージがある。



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名状しがたき家族団らん


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「ネギ成分が足りません」
 トン、と味噌汁の器を置いて、ミクがキッと睨みつけてくる。
 カイトは正直どうしていいかわからずに、困惑していた。
 これが三次元ならばスーパーにネギを買いにいけばよかったのかもしれない。しかしあいにく、ここはパソコン内。永遠の2.5次元。0と1のデータの海。
「えーとね、ミク。今の我が家の味噌汁画像はこれしかありません」
 ほら、とカイトが手をかざすと、「食べ物」画像フォルダに収納された味噌汁画像がずらりと並ぶ。オーソドックスな、豆腐、油揚げの味噌汁から、しじみ汁、豚汁まで。
「何が不満だ」
「だからネギ成分が。吉●屋のネギだく牛丼くらいにネギが入ってないとネギ味噌汁じゃないもん!」
「そんなあびるほどにネギが溢れている味噌汁画像なんてないよ!」
「じゃあ、ネギだく画像からトリミングしてきてよ!」
「それは僕じゃ無理だよ……」
 パソコン内ボーカロイドフォルダ、クリプトン家。人間の家を模した擬似生活空間となっているこの電脳空間。主に画像データの寄せ集めで作られた夕飯の食卓で繰り広げられる青い兄と緑の妹の微妙な言い争い(というか主に緑の一方的なフルボッコタイム)を横目に、黄色い双子はそれぞれミカンとバナナをのん気に食べていた。
「今日のミク姉は無茶振りだな」
「あー、オトメ心は複雑だからしょーがないよね。カイト兄ニブチンだし」
「ん、何かあったのか?」
「あーあー、レンもニブチン仲間だ。やんなるわ」
「何だよ、リンは知ってんのか?」
「あたしの時にレンが同じことやったらフルボッコだわ」
「一体何がだよ!?」
「もー、仕方がないなぁ。特別に教えてあげる」
 リンがレンにひそひそと耳打ちをする。真相を聞いたレンは、途端に顔を歪めた。
「そんなことでかぁ!?」
「そんなことじゃないっての!」
 リンが思い切りよくレンのしばった髪の尾をつかんで引っ張るので、こちらはこちらで主にミカン優勢の一方的なフルボッコタイムが始まる。
 そんな二人を更に横目にして、マグロのお刺身を食べているルカと晩酌をしているメイコが、揃って肩をすくめる。
「気づかないものなんですね」
「男なんてそんなもんよ。聴いてよ、ルカ。この前マスターったらねぇ!」
「はいはい、聴いていますよ」
 こちらは絡み酒が始まっていた。
 一方、青緑攻防戦はというと。
「私とアイスどっちが大切なの!?」
「何その二択!? どっちも大切だっていうか、ベクトルが違いすぎて比べようがないよ!?」
「そこは迷わずミクって答えるところでしょ!?」
「じゃあ、ミクは僕とネギどっちが大切なのさ?」
「今はネギ!」
「ちょっと酷すぎない!?」
 兄はネギ以下の存在にまで貶められていた。
 そして黄色い双子はというと。
「お前の母ちゃんデベソ!」
「母ちゃん同じだし! っていうか、あたしらの母ちゃんって会社だし!」
 さらにわけのわからない低レベルの極みに達していた。
「あらあら、大変ですね」
 やんわりと微笑みながらマグロに舌鼓を打つルカの隣で、おつまみの鮭トバをかじっていたメイコが突如一升瓶を片手に立ち上がる。
「あんたらいい加減にしなっっ」
 飛んだ空の一升瓶を、双子は偶然にも床で取っ組み合いになっていたおかげで回避し、ミクのツインテールの先っぽをかすめ。
 ――そしてカイトの頭にクリーンヒットした。
 その場で卒倒するカイト。静まり返るダイニング。我に返るメイコ。
「あら……ちょっとやり過ぎたわね」
「メイコ姉さま、さすがに殺人、いえ、殺プログラムはいけませんわ」
「大丈夫だって、ほら、リカバリとか……」
「インストールしなおしってことですよね、ソレ」
 不穏な会話をする年長女性陣を前に、双子は萎縮して揃って正座をし、ミクは床に伸びているカイトを必死に揺り動かす。
「もうわがまま言わないから、起きてお兄ちゃん! アンインストールされちゃうっ!」
 アンインストールという言葉に反応してしまったのか、伸びていたカイトの身体がピクリと反応する。
「お兄ちゃん! 大丈夫!?」
「あ、アンインストールは……やめ……」
「しないから! しないから起きて!」
「あ……あ、うん、大丈夫」
 頭をさすりながら起き上がったカイトは、幸いにして(というかデータなので)割れなかった凶器の一升瓶を拾い上げ、うろんな目でメイコを見つめた。
「やだわカイト、ちょっと手が滑っただけよ」
「あ、うん……その割には殺意こもってたけど。僕も姉が酒乱だとは思いたくないからそういうことにしておくね」
「あははは、そうそう。そういうことにしといて」
 微妙に空々しい会話だった。
 カイトは一升瓶を片付けて、さっきまで熾烈な口撃を唸らせていた妹の頭にポンポンと手をのせる。
「ミクは怪我なかった? 大丈夫?」
「うん、大丈夫。ごめんね、お兄ちゃん。言い過ぎて」
「ん、まぁ、これくらいは慣れてるよ」
 少し困ったような顔で微笑んで、彼はミクのリボンに手をやった。
「せっかく可愛いリボンをしているのに、乱れちゃってるよ。直してあげるね」
 きゅっとしばりリボンをしばりなおす、兄の顔をミクは信じられないような目で見上げる。
「…………気づいてたの?」
「ん? リボンが違うの? そりゃ気づくよ。毎日見てるんだから」
「言ってくれればよかったのに」
「言ったほうがよかった?」
「女の子がいつもと違うアクセサリーをつけていたら、可愛いとか似合うとか言うのが礼儀ですー!」
「それで怒ってたの? でもさ、ミク」
「何よ?」
「むしろアクセサリーが変わっただけでわざわざ可愛いとかいう方が失礼ぽくない? アクセサリーとかなくたって、普段から充分可愛いのにね」
 ニコニコと笑いながらいうカイトに、ミクはみるみる内に顔を赤くほてらせる。
 そんな二人を間近に見つめ、先ほどの喧嘩など忘れたかのように双子は耳打ちしあった。
「カイト兄って、やっぱ天然タラシだよな」
「っていうか、きっとミク姉が相手じゃなくても言うよ、カイト兄は」
「あらあら、修羅場フラグですわね」
 双子の言葉に、ルカが上品に不穏な合いの手をいれる。
 二本目の一升瓶を開けたメイコは、グラスに酒を注ぎこみながら答える。
「タラシじゃなくてただのバカよ。タラシこめる甲斐性があったら、喧嘩なんてしないでしょ」

 クリプトン家の夜は更け行く。
 その日のカイトとミクのデザートは、お互いの譲歩と仲直りの証拠としてバニラアイスのネギだく盛りとなった。
 ちなみに味については、二人ともノーコメントを通している。

posted by さわのじ。 at 01:36| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説  | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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