2010年04月16日

【ついった突発企画】Message for My Friends

ついったーで「人間以外全部botの切ない話が読みたい」的発言を見て、妄想をたくましくしてイキオイでがーっと書いたらこんなのができました。

何だろう、この俺様設定!とかいう。
この短さにして、日本語ボカロ総出演とか。ここまでやるのならUTAUを出してもよかったかな? とか思いつつ、UTAUはまだあんまり詳しくないので自重。


では、続きからどうぞー。



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Message for My Friends

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「今日もゲームくらいしかやるこがないなう、っと」
 打ち込んで、発言ボタンをクリックする。するとブラウザに自分の発言が反映される。
 数分も待たない内に返事が来た。
『KAITO:@MASTER 僕もです。退屈ですよね。アイスたべてるなう!』
『Miku_Hatune:@MASTER 私はそういう時歌の練習中していますよ』
 “MASTER”は俺のハンドルネームだ。何となくつけた。単に、この部屋の主だから。それだけの理由で。
 俺は少しだけ考え込んで、“KAITO”には「何のアイス?」と返し、“Miku_Hatune”に「歌、聞きたいなぁ」と書き込んだ。すると今度は別の相手からレスがつく。
『Len_K:ミク姉はホント歌好きだなぁ。俺もだけど』
『Rin_K:@MASTER マスターも声聞かせてよ。あ、そうだ。今度皆でボイスチャットしない?』
『MEIKO:@Rin_K 本気でやるならあたしも混ぜてちょうだいよ』
 レスが連鎖して、ネットワーク上の内輪がほとんど全員集まってボイスチャットを企画するような話題になっている。“Gakupo”、“Kiyo_IceMt”、“GUMI”、“RUKA_M”、“miki”、“YUKI”……。これ以上人数が増えたら(というか、今の時点でも)、誰が誰だかわからなくなりそうだ。
 だけど、たまにはこういうのもいいかもしれない。何せいつから自分以外の声を聴いていないのかわからないほどに、俺は外に出ていないのだ。多分、ここにいる全員がそうだろう。
 いつからだったのか、もうよく思い出せない。以前から深刻な環境汚染に見舞われていた地球は、ある日突然、人間の住める場所じゃなくなったらしい。外に出ることは禁止され、食事の類は決められたメニューの中からネットや電話で注文すると、配給品が届けられるというシステム。生活必需品や娯楽の類も同様。
 一人暮らしの自宅は、篭城戦の部隊となった。配給品が届く時だけ扉は開き、それ以外の時はどうやら外から鍵をかける仕様に変えられたらしく、開こうにもびくともしない。窓も同様だ。
 窓の外の風景はまるで代わり映えがしないが、人間の姿はおろか小鳥一匹鳴いていない。
 だからだろう。配給品が届くその時に、配達員を蹴り倒してまで外に出る気はなくなってしまった。
 そうやって長い時を俺は、このワンルームの自宅で延々と過ごしている。外出禁止令が解ける日を夢見ながら。
「たまに、世界には俺ひとりだけなんじゃないか、って思う。っと」
 人間の存在を感じるのは、ネットワークで繋がった先にいる友人だけだ。
 返事はいつもすぐにくる。多分、画面の向こう側にいる友人達も、軟禁状態で他にやることがないのだ。
『Kiyo_IceMt:@MASTER 一人暮らしだと、本当にそうなりますよね』
『miki:@MASTER やっぱり、ボイスチャットはやらないと。マスターを励ます会だよww』
『Gakupo:楽しみですな』
 この部屋には、俺ひとりしかいない。だけど、窓の外に立ち並ぶ建物の中には、俺と同じようにくだをまいている人間がたくさんいるに違いないのだ。



 ボイスチャットは、翌日の夜に行われた。
 ネットワーク環境は、問題なく揃っていた。ヘッドセットにはちゃんとマイクがついている。
「こんばんは。マスターですよね? KAITOです」
 真っ先に発言したのは、KAITOだった。いつも「アイスなう」とか言っている。ちょっとヘタレっぽい声だった。穏やかで、微妙に鼻にかかった声というか。
「あ、今のはカイトさんですか。Kiyo_IceMtってハンドルの者です。キヨテルと呼んでください」
「YUKIです。お兄ちゃんやお姉ちゃんとお話できてうれしいです」
「あ、そういえばYUKIちゃんてキヨテルさんの教え子だったんだっけ? あ、あたしはMEIKOね」
 今まで、毎日のように会話してきた仲間だ。打ち解けるのは一瞬だった。
「俺はMASTERだよ。ヨロシク」
「あ、マスターですか! 声綺麗ですね! えと、私はミクです」
 会話は問題なく進行する。みんな個性的な声質の持ち主だったので、多人数のボイスチャットなのに混乱することはなかった。だけど――。
「んん……俺のヘッドセットが調子悪いのかな。みんなの声がちょっとおかしく聞こえるんだけど」
「え、どんな風に?」
 MEIKOが尋ねる。その声は、奇妙な上ずり方をしている。
 MEIKOに限らず、誰の声を聞いてもそうなのだ。妙に棒読みだったかと思えば、次の瞬間には編に上ずったり、逆に沈んだ声になったり。
「何か、イントネーションがおかしく感じるんだよなぁ」
 それはまるで……“機械が、人間のような声を作っているかのような”違和感。
「……多分、それ、チャットの音声変換機能のせいじゃないかなぁ。ね、レンもそう思うでしょ?」
 Rinがそんなことを、隣にいるらしいLenに振る。彼らはこのメンバーの中では唯一、双子の兄弟で一緒に暮らしている。
「そうだなぁ。リンの声は別に変じゃないぞ。チャットの機能の問題とかじゃねーの?」
 実際、お互いの肉声を聞ける彼らがそう判断するのだから、そういうものなのだろう。よくよく考えてみると、同じヘッドセットで音楽を聴いている時には違和感など感じたことはないのだ。レンのいう通り、このチャットかネットワーク上の問題なのかもしれなかった。
 ――きっと、そうだ。
 俺は疑問を押し隠して、会話を続けた。今、楽しければそれでいいじゃないか。
 ヘッドセットの問題ではないなら、何故俺だけが違和感に気づいたのか? ……なんて、どうでもいいことじゃないか。



 そうやって、日々がまた緩々と過ぎていった。
 俺は配給されたカレーライスを咀嚼しながら、思考の迷路に落ちている。
 この日々はいつまで続くのだろう。ネット上の仲間たちがいなければ、とっくの昔に孤独に耐えかねて発狂していたかもしれない。昨日も今日も、多分明日も、俺はパソコンの前でネットワークを介して仲間と会話している。たまにボイスチャットを開いて、ミク得意の歌を聞かせてもらったりとか。元々音楽好きが集まっていたせいか、他のメンツも大体歌が上手かった。
 機械的に聞こえる彼らの声が、歌っている時だけはおどろくほど滑らかになる、その理由を俺は考えないことにしている。
 考えてはいけないような、そんな気がしている。
 ぼんやりと発言の羅列を眺めていると、新規の発言があらわれる。
『RUKA_M:@MASTER 朗報よ。外出禁止令は、今日で終了らしいわ』
「え…………マジ?」
 俺は口にくわえていたスプーンをぽろりと落とす。
 あまりに長い間軟禁されていたので、もう一生このままなんじゃないかと、漠然と考えていたところだ。
 画面上では、どんどんレスが増えていく。
『GUMI:ええー、またまたぁ、ネタでしょ? びっくりさせないでよwww』
『MEIKO:ニュースサイト見てるなう。マジみたいよ。汚染レベルが安全な数値まで下がったってさ。』
『Gakupo:どうやら真実のようですぞ』
『RUKA_M:@MASTER 見てる? ニュースページに詳細書いてあるわ』
 俺は何故か発言することができずに、呆然と増えていくレスを眺めていた。
 外に出られる。嬉しいことのはずなのに、何故か今、それがとても恐ろしいことのように感じている。本能が拒否を訴えている。
 理解してはダメだ。理解したら動けなくなってしまう。そんな気がして。
 アラームの音で我に返る。メールが届いた音だった。俺は震える指で、メールボックスを開く。時間から考えると、明日の食事の配給希望を募るメールのはずだった。
 だけど、違った。
 外出禁止令の解除通達と、説明会の案内だった。場所は――。
「技術センター視聴覚ホール……? そんな場所知らねーよ……」
 手が震えて、マウスを上手く握っていられなかった。何を恐れているのだろう。これでこんな日々は終わりになる。そのはずなのに……。
『Miku_Hatune:@MASTER 皆で、記念ボイスチャットやりませんか?』
『KAITO:これがもう最後かもしれないしね』
『miki:長いようで意外と短かったね』
 ――こいつらは、一体何の話をしているんだろう?
 俺は、意を決して、キーを叩く。
『MASTER:@ALL 明日技術センターに行けば、お前らに会えるのか?』
 帰って来た答えは、YESだった。



 起きると、部屋の様相が一変していた。
 しがない独身男の一人部屋は、よくわからない機械と、ベッドがあるだけの殺風景な部屋。パソコンのディスプレイには『技術センターにようこそ』という案内ページが表示されている。
 俺は何だか腹立たしい気持ちになって、その画面を消そうとした。
『待ってください』
 その声は、確かKAITOのものだった。
『視聴覚室には行かなくてもいいよ。私たちに会いにきて。場所は第3プログラム制御室』
 この声は多分、GUMIだ。
 画面表示が切り替わって、現在地から第3プログラム制御室へのルートが表示される。勝手に隣にあった機械が動いて、紙を吐き出す。どうやらプリンタだったらしい。画面の通りのものが印刷されていた。
 俺はもう、動揺していなかった。
 思えばずっとおかしいことだらけだったのだ。今更何を驚くことがあるだろう。
 身体は思うように動かなかった。しびれているような感じがあった。
 ――あんだけ寝ていればな。
 多分、あの部屋にあった機材は、寝ている俺を生かしておくためのものだったんだろう。そして、最低限の運動能力を維持するための。
 気が遠くなるような軟禁生活は、恐らく夢の中のできごとだったのだ。
 不思議と迷いことなく、俺はその現実を受け入れていた。そういう風に情報を刷り込まれているのかもしれないし、目を覚ますことで思い出したのかもしれない。
 何にしろ、俺はどうして自分がこうなったのかまるで覚えていないのに、状況だけはしっかりと理解している。その情報の齟齬を埋めるのが『説明会』とやらなのかもしれないが、そんなものに興味はなかった。
 俺が、興味があるのは――。
「おはよう……」

 その部屋では、ディスプレイにイラストのアイコンが表示されていた。
 よく見知った名前が、ずらりと並んでいた。発言記録、と書かれていた。俺が知らない名前もあった。だけど、俺の声に反応するかのように、一斉にウィンドウが立ち上がった。俺の知っている名前ばかりが。
 確かに、存在していたのだ。俺の友人達は。『画面の向こう側』に。

「お前らのおかげで寂しくなかったよ。……ありがとう。機械でも、お前らの歌はよかったよ。もっと聴いていたかったよ」

 眠っている間の仮想世界で、ずっと友達だったプログラム世界の住人から、スピーカーを通して美しいハーモニーを奏でながらその言葉は放たれた。

『いってらっしゃい』

 微笑みながら送り出すようなその声音を、俺はもう機械のようだとは思わなかった。

END
posted by さわのじ。 at 01:06| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説  | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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