2009年10月20日

【にゃぽ再録】ボカロ家族ネタその2

ボカロ家族ネタ。コレの続きのようなもの。
カイミク風味。天然タラシな兄さんと、兄さん好きすぎるミクと、そんなミクをからかいたいルカ様。そんな話。
季節はずれホワイトデーネタです。にゃっぽんに載せていた頃はその季節だったんですよ!************************


白い日と緑の悪魔とサドの姉


************************


 ボーカロイド家族(のマスターの趣味による設定)の中では、三女にあたる初音ミク。
 愛らしい姿と声で不動の一番人気を誇るアイドルである彼女は、ぶっちゃけた話、かなりのブラコンだった。
 このパソコン内にできあがったバーチャルボーカロイドハウスに、初めてやってきた「お兄ちゃん」であるカイト。長姉のメイコは「頼りなさ過ぎる」というけれど、優しくて穏やかな声と笑顔、外見の割に子供っぽいところ、そのくせ時折急に見た目相応に大人の態度を見せる彼に、ミクはべったりとほれ込んでいる。
 別に恋というわけじゃない。多分、これは家族愛の方に近い。それでも、好きなことには変わりない。
 普段は頼りない兄を支えるしっかり者の妹というポジションにおさまりつつ、二人きりになったのを見計らって存分に甘えてみたりする。そんな毎日が、ミクには幸せでたまらなかった。
 彼女が、来るまでは。
「兄様、少しこの音源のことでご相談があるのですけど」
 微笑む口元は艶っぽく、見つめる瞳はどこか怜悧なようで確かな情熱を感じさせ、ふくよかな胸とスリットから覗く白い太ももが、何ともいえない艶かしさをかもし出している。
「ああ、ルカ。僕なんかでいいの? 今日はめーちゃんもいるよ?」
「いえ、兄様にうかがいたかったんです」
 くすくすと笑う声も上品で、かつ色気がある。
 つい最近この家族の一員に加わった、(マスターの妄想設定により)次女にして帰国子女でもあるこの姉は、ミクの方をチラリと見やって、悪戯っぽい笑みを浮かべた。
 ――また、お兄ちゃんを横取りしたーっ!?
 心の叫びを飲み込んで、ミクは拳を握り締める。
 八つ当たり気味に部屋を飛び出し、乱暴に扉を閉めた。
 見下ろしても、自分の胸はAカップ。どんなに頑張って見積もってもBカップ。スカートとニーソックスの間に覗く絶対領域は、ルカに負けないくらい白いけど色っぽいというよりは健康的。
「お兄ちゃんのスケベー!」
 若干的外れな八つ当たりをまき散らして、ミクは敗走する。

 そんな、彼女が去った後の部屋で、カイトは首をかしげていた。
「あれぇ、ミク? どうしたんだろう、慌てて」
「……お忘れ物でも取りにいかれたのでは?」
 くすくすと笑うルカ。
「ホワイトデーのお返し、何がいいのか聞こうと思っていたのになぁ」
「あら、バレンタインの時は流行だからって逆チョコを渡されていたじゃないですか。兄様はお返しを貰う立場でしょう?」
「うん。でもやっぱり、逆チョコは聞くけど逆クッキーとか逆マシュマロとかは聞かないしね。それに……」
「それに?」
「僕が、好きだから。喜んでいる顔を見るのが」
「兄様らしいですね。私、この一ヶ月でだいぶ兄様のことがわかってきました」
「ん? アイスが好きだとか?」
「それはとっくに知っています」
 ――ついでにいうと、妹のからかい方もだいぶわかってきましたよ。
 そんな意地の悪いことを考えながら、ルカはミクの消えた扉の向こうを、じっと見つめていた。



「ホワイトデーが勝負なのよ!」
 リビングにいた双子に向かって、ミクは高らかに宣言をする。
 リンは適当に拍手を送り、レンはバナナを食べながら呆れ顔だ。
「お兄ちゃんがどっちにより心をこめた贈り物をくれるかで、愛の差が試されるわ」
「いや……カイト兄は、全員平等に渡すタイプだと思う。というか、カイト兄、逆チョコ渡してたじゃん。むしろミク姉はお返ししなくちゃダメだろ!」
「うっさい、レン! 確かにもらったけど、ちゃんと私からもあげたもん!」
「ミク姉は、カイト兄のことになると、ちょっとネジが飛ぶもんねぇ」
 みかん片手にのんびりとテレビを見ていたリンが、おおむね聞き流しながらそんなことを言い、双子の姉ほどのスルー技術を身につけていないレンが、あああ、と頭を抱えた。
「もらえる愛の差より与える愛の差で勝負してくれよ!」
 ――このままでは、俺が貰う分にまで嫉妬されそうだぞ。
 そう思っての一言だったわけだが。
「与える愛で負ける気は毛頭ないわ」
「…………カイト兄からの愛は信用しないのかよ」
「ルカお姉ちゃんの魔性の魅惑に惑わされてるもの!」
 ――ああ、ルカ姉が魅惑的なのは認めているわけね。
 レンは一人納得する。今までカイトの隣にいることに、ミクのライバルなど存在しなかった。メイコは一人で何でもやる系だし、リンとレンはどっちかというと二人でつるんでカイトにアタックをしていたから、ミクの絶対的ポジションを脅かす存在ではなかった。それが、ルカの登場でいともあっさり安全圏が脅かされ、しかも相手は自分にはない大人の色気をもっているときた。
 カイトのことだから、家族とは仲良く! という信念の元、ルカを気にかけているだけなんだろうけれど――。
「レンー、ミク姉のことはほっときなよー。カイト兄のことだから、何かあってものらりくらりかわすって」
 リンが食べ終わったみかんの皮を、ゴミバコに投げ捨てながら言う。確かに、自分はちょっと心配しすぎな気もする。しかし、レンとリンは以前、いたずらでカイトにトウガラシアイスを食べさせ、ちょっとした惨事を起こした前科がある。今のミクの暴走ぶりだと、また酷いオチが待っていそうで若干怖い。
「いいじゃん、あたしらが大変なわけじゃないし」
 心を読み取ったかのように言い放つ双子の姉は、なかなか器が間違った方向に大きすぎると思うレンだった。



「お返し? ああ、カイトのね。こっちも一応チョコやったんだから、別に返さなくてもいいんじゃない。はい、ホワイトデー終了のお知らせ」
 メイコに相談したら、にべもなくそういわれた。ミクはがっくりとうなだれる。
「大体、あいつはどんなものでも喜んで食べるわよ。アイスなら尚のことね。トウガラシアイス事件の時みたいなのはごめんよ? まともなものあげなさいね?」
「ちゃんと美味しいものあげるもの!」
 ぷんぷんと子供っぽく怒りながら、ミクは料理の本を手に取った。台所にはいつ何時でもアイスを用意できるように、カイトの希望でアイスクリーマーが設置されている。ついでに、アイスの材料も常に揃っている。これはもう、作るしかない。
「……ネギ、いれんじゃないわよ」
「いれないもん!」
 ミクは姉の進言に、ムキになって反論する。
 ホントはちょっとだけネギ汁をいれようと思っていたのはヒミツだ。



 その頃、ルカの質問におおむね答えたカイトは、外出の準備をしていた。
 といっても、パソコン内電脳空間における外出は、マスターに呼び出されて歌いにいくか、あるいは自分が欲しいものをもってくるためにネットの海をあさってくるかの二択。今回は後者だ。
 ルカはマスターから呼び出される以外の用事で、このプログラムの内部を歩き回ったことがなかったので、カイトの外出は新鮮なできごとに映った。
「ご一緒してもいいですか?」
「でも、一緒に来たらもらえる時の楽しみがなくなっちゃうよ?」
「少し興味があるもので」
「そう?」
 カイトはさほどプレゼントの内容を秘密にする気はないらしい。
 ボーカロイド一家の棲家である、プログラムフォルダを出て、うろうろとしていると、マスターのインターネットエクスプローラーのデータに、お気に入りページがブックマークしていあるフォルダがあった。カイトはその中でも、ショッピングサイト目星をつけて飛び込んだ。
 彼はショッピングサイトのサムネイル画像を、拾い集めはじめる。卵に砂糖、ゼラチン、バニラエッセンス――どうやら、お菓子の材料らしい。ついでにネギやマグロや日本酒まで拾っているところを見ると、晩御飯材料の調達もここですませるつもりのようだ。
「あのー、兄様」
「ん? どうしたんだい?」
「この画像……無断で持っていっていいんですか?」
「ああ、フォルダに保存しなければ」
「……ええ?」
「僕らも、ほら、データだから。データがデータに触ってデータを食べても、データを移動したり消去する機能とかないから。自分ちのフォルダに勝手にダウンロードして保存したらダメだけど、持っていって食べる分には自由」
「そう……なんですか?」
「そうなんです」
 そもそも、カイトを始めとしたボーカロイドたちは、なんとなしにマスターのイメージを反映して、フォルダの中で人間のような生活を送っているのだ。本当は何も食べる必要もないし、姿さえパッケージ画像を元にしたものだったりもする。
 しかし、ルカは何となく、釈然としないものを感じた。まだインストールされて日が浅いせいだろうか。大体、こんなに危機感もなくあさっていて大丈夫なのか――。
「あ、やばい、ルカ。警察さん呼んで?」
 警察さん、と呼ばれて彼女はきょとんとする。
 警察。マスターの認識を元にした人間知識によると、犯罪を犯した者を取り締まる役割。
 何のことだろうと首をかしげているうちに、事態で強制的に納得させられた。
「……スパイさんに捕まっちゃったみたいで」
 スパイウェアらしき謎の人影が、兄をがっしりと拘束していた。
 ――速攻で人質にとられるとか、どれだけヒロインなんですか!?
 ルカがピントのずれたツッコミを心中でかましてしまったのは、マイペースすぎる家族(主に兄)に毒されてきたからかもしれない。



「お兄ちゃんとルカお姉ちゃんがいない……」
 アイスクリームは後はほぼ待つだけの状態まで完成させて、ミクは兄の姿を探していた。探すうちに、兄どころか次姉もいないことに気がつき、衝撃に打ち震えていた。
 まさかこんなところで抜け駆けをされるなんて。許すまじ。
 若干、被害妄想が入ってきた三女は、悔しさのあまり頭に血が上っている。最早、何が目的なのかわからなくなってきている。
「カイト兄ならルカ姉と一緒に買い物行ったよ」
「確かにちょっと帰りが遅いけど……」
 双子の言葉を受け、ミクは全力で家(というかフォルダ)を飛び出した。ただならぬ気配を感じた双子は顔を見合わせて、姉の後を追いかける。
 カイトがいつも買い物(?)をしているネットショップにたどり着いた時、三人が見たのは実に微妙な光景だった。兄が何者かに捕まっていて、ルカがそれに対峙して人質の解放を訴えているという、「それ、男女の役割が逆じゃね?」という状況。
 さすがに敵対心など吹っ飛んだのか、ミクはルカの元に迷わず駆け寄った。
「お姉ちゃん!?」
「ああ、ミクさん、あの……警察って何のことですか!?」
 ルカも相当あせっているらしい。いつもクールにして飄々としている彼女が、声を裏返らせながら聞く。
「警察!? ああ、インターネットセキュリティのこと! リン! 呼んできて!」
「了解っ!」
 セキュリティプログラムのフォルダに全力疾走をする双子の姉を見送って、レンはどうしたものかと思案する。ウィルスにかかって病気を撒き散らされるよりはマシといえども、なぜに兄はこうもあっさりと捕まるのかと。何とかしてカイトを解放させねばと思いつつも、言葉でどうにかなるのなら、ルカの説得に応じているはずで。
 ぐるぐると考えていると、ミクがゆらりとレンの前に立った。どこで拾ったのか、その手には長ネギ。
 さらに手前に立っているルカに、彼女は気迫のこもった声で語りかける。
「ルカお姉ちゃん、どいて」
 今、ミクの周りには暗黒色のオーラが立ち上っていた。まさにヤンデロイド。
「そいつ、殺せないっっ!」
 立ちすくんだルカとレンがみたものは、長ネギを武器にスパイウェアを豪快にぶっとばす緑の悪魔だった。



 ミクが猛然と張り倒したスパイウェアは、警察さんことセキュリティソフトにお持ち帰りされた後、さっくりと削除の刑を処され、四人はぞろぞろとそろって家に帰ってきた。
「……色々と呆れたわ」
 今回の一件に関して、メイコからの一言。
 ある意味騒ぎの発端であり、お姫さまのごとく囚われていた長男は、長女の諦念をよそに無傷で生還してお菓子作りをしていた。
 にっこにこと陽気な笑顔で、鼻歌まじりにお盆をもって登場した。
「はい、みんなー、ホワイトデーのお菓子だよー」
 ふわふわのマシュマロがフルーツソースをかけられて器に盛り付けられている。普通においしそうだ。普段からアイスを自作しまくっている彼は、手作りお菓子に関してはプロフェッショナルな腕前を誇っている。
「……」
 ミクは少し不機嫌だった。
 スパイウェア相手に大暴れしていたおかげで、アイスクリームは少しばかり固まりすぎてしまった。おいしいアイスを食べてもらいたかったのに、これじゃ恥ずかしくて出せやしない。
「ミクさん、ちょっと」
 ルカがキッチンからミクを手招く。何のようだろうと、顔を出すと、彼女はエスプレッソを入れているところだった。大き目のコーヒーカップの中に盛られているのは、失敗したミクのアイスだった。
「ル、ルカお姉ちゃん!?」
「危ないですよ」
 淹れたばかえりのエスプレッソを、ルカはアイスの上からゆっくりとかける。苦い香りと甘い香りが混ざり合う。
「アフォガードってこれでいいんでしょうかね」
 とろけて混ざりあう、アイスの白と琥珀色のコーヒー。
「さあ、溶けすぎる前に運んでください。兄様に食べていただきたいんでしょう?」
 くすりと笑う姉は、ミクには真似できない大人の色香に満ちていて。
「それと、妹の反応があまりにもかわいいんでついからかってしまいますけど、兄様を独占する気なんてないんですよ?」
 だけど、少しだけ子供っぽさもにじんでいたので、ミクはなんだか今までにない親近感を覚える。
 同時に、妙な嫉妬を覚えていた自分が気恥ずかしくもなり……。
「私だって……別に、お姉ちゃんが嫌いなわけじゃないもの。大人っぽいし、その、スタイルだっていいし、すっごいうらやましいもの」
「今度、一緒に歌いましょうか」
「……うん、いいよ」
 こうして、主にミクが一方的に売っていた姉妹喧嘩は終結する。
 マシュマロとアフォガードを囲むホワイトデーは、一ヶ月もすれば笑い話になるのかもしれない。
「でも酷いよ、お姉ちゃん。からかってただなんて」
「うふふ、だって、本当に反応が面白かったんですもの。いじめがいがありましたよ」
「うう……実はお姉ちゃん、サドの人?」
「そうなんでしょうか? そういえば、兄様はいじめがいがありそうですよね」
 くすくすと笑う姉の横顔に、目覚めつつあるサディストの片鱗を見てしまい、ミクは背中を冷や汗が伝っていくのを感じる。もしかして、自分はとんでもない悪魔を目覚めさせたのではないかと。
「……あんまりやりすぎちゃダメだよ?」
 ひとまず、それしか言えなかった。



 アフォガードを運んできたミクとルカを見て、カイトは目を輝かせた。アイスに目がない彼らしい反応だ。
テーブルに並べて、カイトの右側に座ろうとしたルカを彼は制止する。
「あ、ルカ、座るんなら、左側にしてくれると嬉しいな」
「どうかしたんですか?」
「僕の右側、ミクの定位置だからね」
 さりげなく言ってのけた兄に、ルカではなく、ミクの方が動揺した。思わず取り落としかけたアフォガードのカップを、アイスに命をかける兄は身を乗り出して受け止める。
「ミクー、危ないよー」
「……お兄ちゃんのほうが危ないと思います」
 顔を赤くしながら呟く妹の言葉に、カイトは意味もわからず?マークでいっぱいの顔をしている。
「カイト兄って無自覚ジゴロ?」
「カイト兄って無自覚タラシ?」
 それぞれ似たような感想をもらす双子に、メイコが訂正を入れる。
「違うわ、ただのバカイトよ」
「酷いよめーちゃん!?」
 情けない声で嘆くカイトの右側に、ミクは収まった。ここは自分の場所だ。兄の公式発表でそう決められたのだから問題ない。
「それじゃあ、私は左側を定位置にしましょうか」
 ルカが涼しい顔でそう言っても、もうミクは簡単に踊らされたりはしないのだ。
「両手に花よ、お兄ちゃん。もっと喜んだら?」
「ん?」
 兄はすでにアフォガードに夢中で、こちらの話などうわの空で。
 悔しかったから、ミクは兄のカップの中からスプーン一口分のアイスを奪い取る。
「ああっ、ミク!?」
「それじゃ、私も」
 慌てたカイトが油断している隙に、ルカもまたアイスを一口分奪い取る。
「酷いよ二人とも!」
 さめざめと泣くカイトとすまし顔で微笑むルカに、確かに兄はいじめがいがある逸材かもしれないと、間違った部分で納得してしまうミクだった。

 その後、カイトはアイスを食べる時だけは、妹たちの定位置を断固阻止するようになったのは言うまでもない。
posted by さわのじ。 at 02:33| Comment(0) | 小説  | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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